2005/01/25

進化の構造

先日、大学時代の先輩から、ケン・ウィルバーという人の『進化の構造』という著作をすすめられた。図書館で借りてみたら、前半1冊目だけで700ページ近い分厚い本だった。Amazonで書評をみると、訳が良いと書かれていたが、確かに読みやすい。だが、抽象的な概念での記述がひたすら続くので、現実的な対象をあらわす言葉にしか普段触れていないと、何がなんだかさっぱりわからないことになってしまいそうである。
第1章を通読した。「階層の問題」と題された節で取り上げられている問題がわかりやすくて面白い。少し引用すると、「階層という言葉は今やはなはだ評判が悪い。・・・すべての理論家が、階層という考えを望まないばかりか社会的な支配、抑圧、不正の真の原因であるとみなしている。しかしそのなかで階層という考えを堂々と熱心に語るのがシステム科学なのである。」たぶん、私の稚拙な考えによると、20世紀後半以降の民主主義や平等性のある社会を実装する方向に突き進むのが流行りである状況では、「階層」=「旧来の支配の構造」と捉えるのが「かっこいい」考えと一般にみなされている、ということが、その一例のように思う。
仕事(情報通信関連)の関係上、システムを階層構造で把握するしそういうアーキテクチャでものを作るのは当然なのですんなりと受け入れることができたが、確かにそういうことを普段考えていない多くの人にとっては、「階層」という言葉でイメージされるものは、支配や抑圧であるような気がした。