2005/03/20

【レビュー】民族という虚構

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4130100890/mixi02-22/250-2660716-6849005

民族という概念は人間が考え出した虚構である。しかし、その虚構を利用して人間は生きているのであって否定的に捉えてはならない。。。。という主張がこの本の骨です。

各民族にはその本質というものは存在しない。人の集まりを民族として捉えるとき、それは民族固有の本質がはじめに存在しそれをよりどころに集団が形成されているのではなく、まずはじめに人と人との差を見出しそこに境界線を設定し境界線で囲われた内部に範疇化される集団が結果として民族として把握される。その後、その集団内の共通理解の柱として、血縁関係の物語や文化的継承関係の物語が「捏造」されて、それがその民族の本質であるかのように人々に了解されて機能するようになる。。。。と。

人の意識の中で民族概念がどのように形成されていくのか、どのようにその概念が人間社会に機能しているのか、集団的責任という考え方が発生する根拠はなんなのか、アメリカ型の多文化多民族主義やフランス型の普遍主義で民族間の対立問題は解消できるのか。。。。興味深い内容が盛りだくさんでした。

心理学的な人間の機能と民族概念のつながりがよく説明されていると思います。具体的に、現在存在する民族問題の解決策が提案されているわけではありません。もっと本質的なレベルでの議論なので、個々の民族問題の解決策などを考えたい人にとっては考え方の足場として役立つと思います。

世の中単純じゃない、相矛盾する複数の論理が平然と並存し人はそれを自然にうけとめて生きている、あるいは並存を許すからこそ生きられる。

おすすめです。